国の制度だけじゃない!自治体の「隠れた」補助金・助成金活用術【東京都の事例を徹底解説】
「補助金」と聞くと、経済産業省や厚生労働省が所管する国の大きな制度(ものづくり補助金や事業再構築補助金など)を思い浮かべる経営者様が多いのではないでしょうか。
しかし、実は「都道府県や市区町村といった自治体独自の補助金」こそが、中小企業にとって狙い目であり、非常に使い勝手が良いことをご存知ですか?
今回は、特に予算規模が大きく制度が充実している「東京都」の事例をベースに、自治体補助金の魅力と、話題沸騰中の「東京版ものづくり補助金」とも呼ばれる制度について、専門家の視点から徹底解説します。
自治体の補助金は実は「目玉」制度の宝庫
国の補助金は全国の事業者がライバルとなるため、採択率が厳しくなる傾向があります。
一方、自治体の補助金はその地域に事業所がある企業だけが対象となるため、競争率や要件の面で独自のメリットがあります。
執行団体を知れば、補助金探しが楽になる
東京都を例に挙げると、国の省庁と似た役割を持つ「外郭団体(執行団体)」が補助金の実務を担っています。
- 中小企業庁(国) ≒ 東京都中小企業振興公社(都)
設備投資や販路開拓など、事業の成長を支援する補助金が多い。
- 厚生労働省(国) ≒ 東京しごと財団(都)
採用、教育、働き方改革など「人」に関する助成金が多い。
これは東京に限りません。大阪なら「大阪産業局」、愛知なら「あいち産業振興機構」といったように、各都道府県には必ず中小企業支援のハブとなる組織があります。
通称「東京版ものづくり補助金」の凄まじい人気と実態
2024年から、東京都の中小企業診断士界隈で話題をさらっているのが、東京都中小企業振興公社が実施している「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」です。(昨年度までは「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」という名称でした)
この助成金、最大800万円という大型の支援額に加え、機械設備からシステム、展示会出展費用まで幅広く使えることから、その汎用性の高さで「東京版ものづくり補助金」と一部で呼ばれています。
「開始6分で終了」の衝撃と、現在の審査方式
その人気ぶりを象徴するエピソードがあります。
2024年度の公募では先着順(予算上限に達し次第終了)の回があり、9月の公募回はわずか15分、続く10月の公募回に至っては「開始からわずか6分」で受付が締め切られるという、まさに「クリック戦争」が勃発しました。
事前にjGrants(電子申請システム)の画面で待機していなければ申請すらできない盛況ぶりだったのです。
さすがに公平性の観点からか、その後の公募(令和7年度分など)からは「一定期間の申請を全て受け付ける」方式に変更されています。
しかし、これは「早い者勝ち」ではなくなった分、「中身をしっかり審査して落とす」方式に変わったことを意味します。
これまで以上に事業計画書の質が問われることになります。
審査プロセスの合理化にも注目
申請方式の変更に伴い、申請時の事務負担も軽減されています。
以前は申請時に全ての書類を揃える必要がありましたが、現在は決算書や履歴事項全部証明書などの公的書類は「書類審査を通過した人のみ提出」というフローに変わりました。
見積書の取得などで事業者の負担が大きい中、まずは計画の中身を見て判断するという公社側の業務効率化が見て取れます。
なぜここまで人気なのか?独特な「申請要件」
この補助金が多くの企業に支持される最大の理由は、逆説的ですがその「申請要件」にあります。
通常、補助金は「成長企業」を支援するものですが、この制度は「苦境にある企業の底上げ」を主眼に置いています。
「売上減少」や「赤字」が申請のパスポート
主な要件として、以下のいずれかに該当する必要があります。
- ・直近決算期の売上高が、2023年決算期以降と比較して減少していること
- ・直近決算期において「損失(赤字)」を計上していること
- ・米国関税措置の影響で次期の売上減少が見込まれること
つまり、原材料高騰や市場の変化で「業績が厳しい」企業こそが対象なのです。
「赤字だから投資できない」ではなく「赤字だからこそ、この補助金を使って設備投資を行い、経営基盤を強化しよう」というストーリーが描けるため、多くの経営者にとって救世主のような存在となっています。
幅広い対象経費
機械装置やシステム導入費だけでなく、昨今のトレンドに合わせて以下のような経費も対象となります。
- ・機械装置・工具器具費:生産性向上のための設備
- ・システム等導入費:ソフトウェア、クラウド利用料など
- ・販売促進費:展示会出展、Webサイト制作、動画制作、Web広告費(※既存事業の「発展」の取組に限る)
東京都の予算は「90億円規模」へ大幅増!
「自治体の補助金なんて、予算が少ないのでは?」と思われるかもしれませんが、東京都の財政規模は別格です。
本事業(事業環境変化に対応した経営基盤強化事業)においては、令和6年度の予算規模が約53億円だったのに対し、令和7年度の予算見積額は一気に約90億円規模へと増額されています。
これだけ予算が拡充されていることからも、東京都が本気で中小企業の底上げを支援しようとしている姿勢が伺えます。
東京都に限らず、各自治体は地域経済を支える中小企業のために独自の予算を組んでいます。
国の補助金情報はニュースになりやすいですが、実は地元の自治体こそが、競合が少なく、自社にぴったりの補助金情報を持っていたりします。
ただ、こうした自治体独自の情報は公募期間が極端に短かったり、情報が埋もれていて見つけにくかったりすることも少なくありません。
だからこそ、日頃からアンテナを高く張り、こうした「隠れたお宝情報」をいち早くキャッチできる体制を整えておくことが、他社と差をつける大きな鍵となるでしょう。