新事業進出補助金の解説
コロナ禍で最大級の予算規模を誇った事業再構築補助金。その大型支援のDNAを受け継ぎ、より企業の「本気の新事業」を支援する形へと進化したのが、新事業進出補助金と呼ばれる新しい枠組みです。
この記事では、事業再構築補助金の後継となるこの制度について、決定的な変更点や、絶対に知っておくべき「不採択になるNGジャンル」について解説します。
1. 最大の変更点:「業種転換」などの複雑な枠が撤廃!
これまでの事業再構築補助金は、「新分野展開」「事業転換」「業種転換」など、今の事業と新しい事業の日本標準産業分類上の組み合わせによって申請枠が細かく決まっており、非常に複雑でした。
しかし、後継制度ではこれらの細かい業種の指定(枠組み)が撤廃されています。
これまで: 「小売業から製造業へ変わるから『業種転換』枠で…」
これから: シンプルに「新事業への進出」であるかどうか
形式的な業種の変更よりも、「その事業が本当に新しい価値を生むのか?」という本質的な新規性が問われるようになります。
2. 申請の必須条件:「新事業進出指針」と「賃上げ」
申請するためには、以下の要件をクリアする必要があります。
① 新事業進出指針(3つの新規性)
単に「新しいことを始めます」では通りません。以下の3点を論理的に証明する必要があります。
製品等の新規性: 過去に製造・提供したことがない、全く新しい製品・サービスであること。
市場の新規性: 既存の顧客層とは異なる、新しい市場(ターゲット)を開拓すること。
売上高10%要件: 3〜5年の事業計画期間終了後、新事業の売上が総売上高の10%以上を占めること。
⚠️「解釈」が重要! 「自社にとっては新しい」だけでは不十分です。「競合他社でも一般的ではない」「定量的に性能が異なる」など、客観的な差別化が必要です。
要件に無理やり当てはめようとしても、客観的に要件を満たしているかを問われます。
② 賃上げと最賃引上げ(返還リスクあり!)
本制度は、従業員の給与アップを強く求めています。
・付加価値額の向上
・給与支給総額 or 従業員一人当たりの給与の増加
・事業場内最低賃金の引上げ
もし、計画通りに賃上げが達成できなかった場合、補助金の一部返還を求められる「返還要件」が設定されるケースがあるため、実現可能な計画を立てる必要があります。
3. 対象経費:建物・機械・システムのいずれかが必須!
この補助金は、大胆な投資を支援するものです。そのため、以下の主要経費のいずれかが必ず含まれていなければなりません。
・建物費(工場の新築、店舗の改装など)
・機械装置・システム構築費(生産ラインの導入、新規プラットフォーム開発など)
これらが含まれない、例えば「広告費だけ」や「研修費だけ」といった申請は認められません。
4. 採択率は30%台!「安易な流行りビジネス」は通らない
かつて事業再構築補助金は採択率が50%台まで上がった時期もありましたが、直近では30%前後(またはそれ以下)と難化傾向にあります。
その最大の理由は、「実効性のない事業計画」の排除です。
❌【重要】中小企業庁から指摘されている「NG事例」
特に、以下のジャンルは「他社との差別化が難しく、補助金目当ての参入が多い」として、中小企業庁から名指しで指摘されており、採択される可能性は限りなくゼロに近いと考えてください。
・フルーツサンド販売店
・サウナ施設、グランピング施設
・セルフエステ
・シミュレーションゴルフ
・自販機、無人販売機
これらの事業は、高い新規性や技術力が求められる本補助金の趣旨と合致しないと判断されます。
まとめ
・後継制度の違い: 複雑な「業種転換」枠がなくなり、シンプルに「新事業進出」が問われる。
・審査のポイント: 「製品・市場の新規性」の解釈が重要。無理な当てはめはNG。
・対象経費: 建物、機械、システムのいずれかへの大型投資がマスト。
・注意点: 採択率は約30%と狭き門。サウナ、ゴルフ、グランピング等は原則NG。
・新事業進出補助金は、本気で会社を生まれ変わらせる覚悟のある企業にとっては、数千万円規模の支援を受けられる大きなチャンスです。しかし、「流行っているから」という理由での申請は時間の無駄になりかねません。
・自社の強みを活かした「真の新規事業」とは何か、まずはそこから検討を始めましょう。