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人材開発支援助成金の不正受給問題から考える、適正な制度利用と厚労省の姿勢

人材開発支援助成金の不正受給問題から考える、適正な制度利用と厚労省の姿勢

人材開発支援助成金の不正受給問題から考える、適正な制度利用と厚労省の姿勢


はじめに:相次ぐ助成金・補助金関連の不祥事

近年、国が推進する様々な補助金や助成金制度において、不適切な申請や不正受給に関するニュースが後を絶ちません。最近でも、国内最大手とされる助成金関連会社が、週刊文春の報道により不適切なスキームの運用を指摘されました。この報道は、助成金・補助金に関わる業界全体に大きな波紋を広げています。 企業が新たな取り組みを行う上で、資金面をサポートしてくれる助成金・補助金は非常に心強い存在です。とくに昨今は、企業競争力を高めるための「リスキリング(学び直し)」が社会的なテーマとなっており、関連する支援制度への注目度も高まっています。しかし、その制度の隙を突いた不正スキームが横行してしまう背景には、どのような構造的な問題があるのでしょうか。 本記事では、今回話題となっている人材開発支援助成金(リスキリングコースなど)を例に挙げながら、不正が起こりやすい制度の仕組みと、厚生労働省をはじめとする管轄省庁の姿勢について解説します。


なぜ不正受給スキームは横行するのか?

「支援事業者」が主導する構造的な問題

不正受給という言葉を聞くと、補助金や助成金を受け取る事業者(申請企業)自身が、受給額を増やすために書類を偽造するなどの悪質な行為を働くケースを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、近年の大規模かつ組織的な不正スキームの多くは、少し構図が異なります。 実は、「補助金・助成金を受け取る事業者」が単独で不正を働くのではなく、「補助金・助成金を申請支援する事業者」「対象となるサービスを提供する事業者」が主導して不正スキームを構築しやすいという制度上の課題が存在しているのです。企業に対して「実質負担なしで助成金が受け取れますよ」と甘い言葉で営業をかけ、巧妙な仕組みに巻き込んでいくケースが少なくありません。


過去の類似事例:雇用調整助成金やIT導入補助金

このような「支援事業者主導」の不適切なスキームは、今回に始まったことではありません。経済産業省が管轄するIT導入補助金では、実際には使用しないITツールを高額で販売し、補助金を不適切に受給させる悪質なベンダーの存在がたびたび問題視されてきました。また、厚生労働省が管轄し、コロナ禍において多くの企業を救った雇用調整助成金においても、一部のコンサルタントや社会保険労務士が関与した大がかりな不正受給が次々と摘発されました。

これらの制度に共通しているのは、申請手続きが複雑であり、専門家のサポートや特定のサービス提供者の介在が必要不可欠になりやすいという点です。その結果、情報の非対称性が生まれ、一部の事業者が制度を悪用しやすい土壌が形成されてしまいます。


人材開発支援助成金における不正の仕組み

制度の概要と関与する三者の関係

人材開発支援助成金は、企業が従業員に対して専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練(eラーニングなど)を実施した場合に、その訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を国(厚生労働省)が助成する制度です。

例えば、特定のコースにおいてeラーニングにかかる経費の75%が助成されるとします(令和7年度までは一定の要件下で上限30万円などの規定があります)。この制度を利用してeラーニングを導入する際、主に三つの主体が関わります。一つ目は「eラーニングを提供する事業者」、二つ目は「申請を代行する社会保険労務士」、そして三つ目が「eラーニングを受講する事業者(助成金の申請企業)」です。


「実質0円」や「手戻り」を生み出す手口

本来であれば、受講事業者は経費の残り25%を自己負担して従業員の教育を行います。しかし、不正スキームではこの原則が歪められます。

eラーニングを提供する事業者は、国から助成金として経費の75%分が受講事業者を通じて支払われる(補填される)ことを前提に、受講事業者に対して裏でキックバック(キャッシュバック等)を行います。つまり、提供事業者は自社の利益を削ってでも受講事業者に現金を戻すことで、「実質0円」、場合によっては「受講するだけで手元にお金が残る(手戻りあり)」という異常な状態を作り出すわけです。

これに申請代行を行う社労士が加担し、書類上は適正な取引が行われたように装って国へ申請を行います。受講事業者からすれば「お金をもらって研修が受けられる」という魅力的な提案に見えますが、これは明らかに助成金の趣旨を逸脱した不適切な資金還流です。

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001664046.pdf


厚生労働省の姿勢と今後の見通し

政府の想定と上場企業関与の波紋

当然ながら、政府や厚生労働省も制度を設計する段階で、キックバックなどの不正行為が行われるリスクは想定しています。そのため、支給要件の厳格な確認や実地調査など、不正を防ぐためのルールは設けられています。

しかし、社会的な信用を持つ企業が制度を食い物にすることは、真面目に制度を利用して従業員のリスキリングに取り組もうとしている多くの企業の機会を奪うことにもなりかねず、政府としても決して看過できる事態ではありません。


企業が注意すべきポイントと適正な制度利用に向けて

今後、厚生労働省をはじめとする各省庁は、不適切な受給に対する監視の目をさらに強化していくことが予想されます。審査がより厳格化され、資金の流れや研修の実態について、これまで以上に詳細な証拠書類の提出が求められるようになるでしょう。

前提として、助成金や補助金は要件をしっかりと満たし、適正な事業計画を策定・実施することで、採択や受給の可能性を高めることができるものです。しかし、「絶対に採択される」「実質ゼロ円で儲かる」といった甘い言葉で近づいてくる業者には十分に警戒しなければなりません。万が一、不適切なスキームに加担してしまった場合、助成金の返還を求められるだけでなく、企業名が公表され、社会的な信用を大きく失うなど、取り返しのつかないダメージを負うリスクがあります。

まとめ

助成金・補助金は、本来、企業の成長や従業員のスキルアップ、労働環境の改善を後押しするための非常に有益な制度です。企業としては、目の前の「お得な話」に安易に飛びつくのではなく、その仕組みが本当に適法なのか、制度の本来の趣旨に沿っているのかを冷静に見極めるリテラシーが求められます。信頼できる専門家やパートナーを選び、自社の課題解決と持続的な成長のために、正しい知識を持って制度を適正に活用していくことが何よりも重要です。

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