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IPO準備と厚労省助成金は相性が悪い?規定変更における二重の手間とリスク

IPO準備と厚労省助成金は相性が悪い?規定変更における二重の手間とリスク

IPO準備と厚労省助成金は相性が悪い?規定変更における二重の手間とリスク


IPOを目指す企業における社内規定整備の課題

企業がIPO(新規株式公開)を目指す過程において、越えなければならない大きな壁の一つが「社内体制の整備」です。中でも、労務管理を中心としたガバナンスの構築は、審査において非常に重要視されます。 IPO基準をクリアするためには、就業規則をはじめとする各種規定を最新の法令に適合させ、実態と乖離のない運用を行う必要があります。この規定整備や体制構築には、専門家への相談費用や担当者の人件費など、小さくないコストが発生します。 そこで、このコストを少しでも補填しようと、厚生労働省が管轄する雇用関係の助成金(以下、厚労省助成金)の活用を検討する企業も少なくありません。しかし、IPO準備と厚労省助成金の活用を並行して進めることは、実務上多くの困難を伴うことを理解しておく必要があります。


厚労省助成金の魅力と受給のためのハードル

厚労省助成金は、労働者の職業の安定や職場環境の改善を目的としています。代表的なものに、非正規雇用労働者の正社員化を促進するものや、育児・介護と仕事の両立を支援するものなどがあります。 要件を満たせば受給できる可能性があるため、企業にとって魅力的な制度ですが、多くの場合、受給の前提として「就業規則や賃金規程、育児・介護休業規程などの変更」が求められます。


助成金受給には規定の改定が必須

例えば、助成金の対象となる制度を新たに規定に明記し、労働基準監督署へ届け出るといったプロセスが必須となります。助成金ごとに細かな支給要件が設定されており、規定の文言一つでも要件を満たしていなければ、受給対象外となってしまうことがあります。

2026(令和8)年度 両立支援等助成金のご案内:https://www.mhlw.go.jp/content/001687926.pdf


IPO基準と助成金要件の板挟み?二重の手間が発生する理由

助成金を受給するために社内規定を変更すること自体は、決して悪いことではありません。しかし、IPO準備中の企業にとっては、これが「二重の手間」を生む原因になり得ます。


IPO審査で求められる労務コンプライアンス

IPO審査では、主幹事証券会社や証券取引所から労務コンプライアンスについて非常に厳しいチェックを受けます。未払い残業代の有無、長時間労働の是正、ハラスメント対策、36協定の適切な運用など、その項目は多岐にわたります。 この審査に耐えうる規定を作り上げるためには、会社の事業内容や将来の展望、現状の労働環境を踏まえた上で、緻密に制度設計を行わなければなりません。


助成金仕様の規定がIPO基準に合致するとは限らない

一方で、助成金を受給するために要件に沿って急ごしらえした規定が、必ずしもIPO審査の基準を満たすとは限りません。助成金特有の細かい要件を規定に盛り込んだ結果、実務の運用が煩雑になったり、会社の本来の組織風土と合わなくなったりするケースがあります。 結果として、「助成金をもらうために変更した規定」を、「IPO審査を通すために再度作り直す」という事態に陥りかねません。社労士や弁護士などの専門家に依頼する費用や、規定改定に伴う社内周知の手間が二重に発生し、担当者の業務的・心理的負担は大きく増加してしまいます。


最大の落とし穴「不利益変更」のリスク

IPO準備と厚労省助成金の併用において、最も警戒すべきなのが労働条件の「不利益変更」のリスクです。


不利益変更の原則禁止

労働契約法において、使用者は労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働条件を変更することはできないと定められています。これを不利益変更の禁止と呼びます。

労働契約法のあらまし:https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001238380.pdf


目先の助成金目的の変更が将来の足かせに

助成金を受給するために、一時的に従業員にとって有利な手当を新設したり、休暇制度を拡充したりしたとします。しかし、その後IPO準備を進める中で「やはりコストがかかりすぎる」「運用の実態に合わない」と判断し、元の状態に戻そうとしても、それは「不利益変更」に該当する可能性が高く、容易には認められません。 目先の助成金獲得を優先して安易に規定を変更してしまうと、後々IPOに向けた最適な制度設計を行う際の大きな足かせとなります。不利益変更を巡る労使トラブルは、IPO審査において致命的なマイナス評価につながる恐れもあります。


まとめ:長期的な視点での制度設計を

IPOを目指す企業にとって、社内規定の整備は避けて通れない重要なプロセスです。コスト負担を軽減するために厚労省の助成金(助成金は要件を満たせば受給できる可能性がありますが、確実なものではありません)を活用することは一つの選択肢ですが、そのために「二重の手間」「不利益変更のリスク」を抱え込むことはおすすめできません。 助成金の獲得ありきで規定を変更するのではなく、まずは自社がIPOに向けてどのような労務管理体制を構築すべきかという「あるべき姿」を明確にすることが重要です。その上で、設計した制度が偶然にも助成金の要件に合致しているのであれば活用を検討する、というスタンスが望ましいでしょう。 上場企業としての基盤を強固なものにするためにも、目先の利益にとらわれない、長期的な視点での制度設計を心がけてください。

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