第20回小規模事業者持続化補助金における変更点と実務の厳格化
小規模事業者の販路開拓や生産性向上を支援する「小規模事業者持続化補助金」ですが、公募回を重ねるごとに制度の改定や手続きの厳格化が進んでいます。
特に第20回公募においては、従来の公募内容と比較して「賃金引上げ特例」の要件設定や、申請・実績報告時に求められる証明書類の扱いについて大きな変更が見られます。
本記事では、第20回持続化補助金における主な変更点や、特に都市部の事業者やシフト制・歩合給を採用している事業者が直面しやすい実務上のハードルについて詳しく解説します。
「賃金引上げ特例」の適用ハードルが大幅に上昇した背景
持続化補助金では、事業場内の賃上げを行う事業者に対して補助上限額を引き上げる「賃金引上げ特例」が設けられています。しかし、第20回公募ではこの算定基準および適用要件が変更され、活用のハードルが著しく高くなりました。
基準比較期間の「2年間の全月在籍」要件
第20回公募の賃金引上げ特例では、従業員1人あたりの給与支給総額を年平均3.0%以上増加させることが求められます。具体的には、「補助事業実施期限日を終点とした連続する12か月」と「その前年同月の12か月」を比較して算出します。
この算出にあたり、それぞれの対象期間において「すべての月で給与支給を受けた従業員」のみが算定対象となります。途中で採用された従業員や退職した従業員は除外されるため、実質的に合計2年間の全期間にわたって在籍し続けている従業員が対象となります。
仮に算定対象としていた従業員が事業期間中や実績報告までに退職してしまった場合、1人あたり給与支給総額の伸び率が算出できなくなり、特例の要件を満たさなくなるリスクが生じます。
小規模事業者・特定業種における影響
小規模事業者の定義として、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)では「常時使用する従業員数が5人以下」と定められています。
アルバイトやパートタイマーの入れ替わりが比較的早い都市部の飲食店やサービス業などでは、2年間にわたり全員が継続して在籍し続けるケースは限られます。この「退職による要件未達リスク」構造により、実質的に賃金引上げ特例の申請を断念せざるを得ない事業者が多数発生する可能性が考えられます。
労務書類作成における手間と複雑化
持続化補助金の申請および実績報告において、さらに大きな負担となるのが「従業員の賃上げ証明書類」の準備です。
「年間休日」および「うるう年」の入力要求
持続化補助金における賃金計算では、労働条件の確認において「1日の所定労働時間」に加えて「年間休日数」の提出・入力が厳格に求められるシステム仕様となっています。計算の過程では、該当する年がうるう年であるかどうかも考慮した計算式が適用されます。
一般的な雇用契約書との乖離とつじつま合わせの懸念
一般的な企業において締結される雇用契約書や労働条件通知書には、「週休2日」や「シフトによる」といった記載が主流であり、「年間休日〇〇日」と明記しているケースは決して多くありません。
実際の労務現場の運用と補助金事務局が求める計算式との間にギャップが存在するため、事業者は補助金申請のためだけに、改めて年間休日数を算出した証明書類や雇用契約書を作り直して証明しなければならない実務が発生します。
特に基本給に加えて歩合給が支給される給与形態の従業員がいる場合、基本給と歩合の取り決め、労働時間、年間休日数を整合させた書類の作成作業は極めて煩雑となります。
制度運用が小規模事業者に与える影響
「小規模事業者持続化補助金」は、本来、資金や人材などのリソースが限られている小規模事業者の持続的な発展や生産性向上を支援することを目的としています。
しかしながら、交付決定から事業実施、実績報告を経て最終的に補助金が振り込まれるまでに長期間(場合によっては1年〜2年近く)を要する点に加え、厳格な労務書類の提出が求められる現状は、事業者にとって大きな事務的コストとなっています。
販路開拓や本業の成長にリソースを集中させるべき小規模事業者にとって、こうした手続きの煩雑さや厳格すぎる特例要件が、結果として制度の活用をためらわせる要因となり得る点には注意が必要です。
まとめ
第20回小規模事業者持続化補助金では、賃金引上げ特例の要件変更や、申請時の添付書類に対する確認精度が高まっています。申請を検討される事業者は、単に「賃上げを行う」という計画だけでなく、対象従業員の定着見込みや、事務局の求める形式に沿った労務書類の準備が可能かどうかを事前によく精査しておくことが重要です。
自社の現状に合わせた無理のない計画を立て、商工会・商工会議所などの専門支援機関と連携しながら手続きを進めていくことが推奨されます。