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新事業進出補助金と「分社化」は相性最悪?建設業・飲食業を兼業するケースで解説

新事業進出補助金と「分社化」は相性最悪?建設業・飲食業を兼業するケースで解説

新事業進出補助金と「分社化」は相性最悪?建設業・飲食業を兼業するケースで解説

企業の成長戦略として、多角化経営やそれに伴う「分社化(会社分割)」を検討される経営者様は少なくありません。特に、既存事業とは異なる分野へ進出する場合、リスク分散や管理の明確化のために別会社にしたいと考えるのは自然な流れです。

しかし、現在公募されている注目の大型補助金「新事業進出補助金」を活用する場合、この「分社化」という選択が思わぬ落とし穴になる可能性があります。

今回は、本補助金と分社化の相性について、具体的な事例(建設業と飲食業を兼業する企業)を交えて解説します。


結論:新事業進出補助金と分社化は相性が悪い

まず結論から申し上げますと、「新事業進出補助金」と「分社化」の相性は悪いと言わざるを得ません。

本補助金は、既存事業とは異なる事業への前向きな挑戦を支援するものです。しかし、公募要領に記載された要件や、補助金特有の「賃上げ義務」などのルールを詳細に読み解くと、分社化のタイミングが申請の「前」であっても「後」であっても、複雑なハードルが生じることがわかります。

以下、「建設業(本業)」を営みながら「飲食業」も展開している企業が、建設業での新分野展開(例:特殊土木への進出)で補助金を申請するというケースを想定し、2つのパターンで問題点を整理します。

(出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 公募要領より)


パターン①:申請「前」に分社化する場合

まずは、補助金を申請する前に、事業を整理して分社化してしまうパターンです。例えば、飲食部門を別会社として切り出し、建設業のみの法人にしてから申請する場合などがこれに当たります。


「創業1年未満」の壁と決算書の連続性

本補助金の公募要領には、補助対象外となる事業者として以下の記載があります。

新規設立・創業後1年に満たない事業者 → ※最低1期分の決算書の提出が必要です。

もし、新設分割等で新しく作った方の法人で申請しようとした場合、その法人が「創業1年未満」であれば、そもそも申請資格がありません。

では、存続会社(もともとの法人)で申請する場合はどうでしょうか? この場合、法人格としての歴史はあるため申請自体は可能ですが、「直近決算書」と「事業計画」の不整合が大きな問題となります。


売上減少に対する合理的な説明義務

補助金の審査では、直近の決算書(貸借対照表・損益計算書)をもとに財務の健全性や事業規模を確認します。

しかし、申請直前に分社化(飲食部門を切り離し)を行っている場合、直近決算書の数字(建設+飲食の売上)に比べ、申請時の事業実態(建設のみの売上)は大幅に縮小していることになります。

審査員から見れば、「なぜ決算書よりも大幅に売上が落ちているのか?」「事業基盤が揺らいでいるのではないか?」という懸念を抱かれます。これに対し、「分社化によるものである」という合理的な説明と根拠資料を用意し、納得させなければなりませんが、これは申請書類の作成難易度を上げる要因となります。


パターン②:補助金を「もらってから」分社化する場合

次に、「まずは今の会社のまま補助金を採択・受給し、その後に分社化しよう」と考えるパターンです。実は、こちらの方がより深刻な「賃上げ要件の罠」に嵌るリスクが高いです。


財産処分の制限と手続きの煩雑さ

まず前提として、補助金で購入した設備(財産)には処分制限があります。補助事業により取得した財産については、交付規程等に基づき処分(中略、譲渡、交換、貸付等)に制限が課されます。 (出典:公募要領 )

建設業で採択され、設備を導入した後に分社化を行う場合、事業を承継させる手続きが必要です。公募要領には「交付決定後、補助事業を他に承継させようとする場合には、事前に事務局の承認を得なければなりません」とあり、非常に煩雑な手続きが発生します。最悪の場合、補助金の返還を求められる可能性もあります。

そのため、今回は「建設事業(補助事業実施部門)は親会社に残し、飲食部門だけを別会社として切り出す」というケースで考えます。これなら補助事業の主体は変わらないので、一見問題なさそうに見えます。

しかし、ここで「賃上げ要件」が大きな壁となります。


分社化で「給与支給総額」の目標達成が絶望的に

本補助金には、補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、以下の賃上げを行う要件(未達の場合、返還義務あり)があります。

  • ・一人当たり給与支給総額の年平均成長率が、都道府県別最低賃金の年平均成長率以上増加すること


  • ・もしくは給与支給総額の年平均成長率を2.5%以上増加すること (出典:公募要領 )


ここで、建設業(高賃金・補助事業実施)を残し、飲食業(相対的に低賃金・多数のパート従業員)を分社化して切り離すとどうなるでしょうか。


【給与支給総額(会社全体の人件費)の罠】

飲食部門の従業員がごっそり転籍して別会社に移るため、親会社(申請事業者)の従業員数は大幅に減ります。当然、会社全体で支払う「給与支給総額」はガクンと下がります。

補助金の要件は「基準年度(申請時)」と比較して年率2.5%アップし続けることです。

分社化によって分母(人員)が減れば、この「総額アップ」の達成は物理的に不可能となり、補助金返還のリスクに直結します。


【一人当たり給与支給総額のパラドックス】

一方で、皮肉な現象も起きます。「一人当たり給与支給総額」です。一般的に、建設業に比べて飲食業はパート・アルバイト比率が高く、平均給与が低い傾向にあります。分社化によって給与水準の低い飲食部門が抜けることで、親会社(建設部門のみ)の「平均給与(一人当たり支給額)」は、計算上、自動的に跳ね上がることになります。


つまり、「一人当たり」の要件はクリアしやすくなる一方で、「給与総額」の要件は絶対にクリアできなくなるという、いびつな状況に陥るのです。

しかしながら新事業進出補助金では、一人当たり給与支給総額全体の給与支給総額どちらか一方でも達成できれば返還額の計算対象にはなりませんので、ハードルは存在するもののクリアしていくことは可能です。


まとめ:計画段階での専門家への相談が必須

「新事業進出補助金」においては、事業計画期間中(3~5年)の組織再編は、賃上げ計算の分母を狂わせる最大のリスク要因です。安易に「事業が軌道に乗ったら分社化しよう」と考えるのではなく、申請前の段階で、組織体制と補助金要件の整合性を慎重に検討する必要があります。

本補助金は金額が大きい分、事後の縛りも強力です。少しでも不安がある場合は、申請前に認定経営革新等支援機関などの専門家に相談することをお勧めします。

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