補助金申請の壁を突破する!事業計画書と収支計画書の「3つの型」完全攻略ガイド
中小企業の経営者様や個人事業主様にとって、補助金や助成金は事業拡大の大きなチャンスです。しかし、その申請プロセスの複雑さ、特に「書類作成」の難易度の高さに直面し、二の足を踏んでしまう方も少なくありません。
「どの省庁にどんな書類を出せばいいのかわからない」「収支計画書の数字に説得力を持たせられない」
今回は、こうした悩みを解決するために、申請書類の全体像と、最難関とされる「収支計画書」のロジカルな作成方法について解説します。
特に、あらゆるビジネスモデルを3つのパターンに分類して数値を算出する「収益計算ロジック」は、補助金申請だけでなく、日々の経営管理にも役立つ一生モノの知識です。ぜひ最後までお付き合いください。
まずは全体像を把握!省庁別・必要書類の分類
補助金や助成金は、管轄する省庁によって求められる書類の「色」が全く異なります。まずは大きく3つの省庁に分け、それぞれの特徴と代表的な必要書類を整理しましょう。ここを混同していると、申請準備がスムーズに進みません。
①厚生労働省:「人」に関する整備状況がカギ
厚生労働省が管轄する助成金(キャリアアップ助成金など)は、主に労働環境の改善や雇用の安定を目的としています。そのため、審査の焦点は「労働法令が守られているか」「従業員の雇用条件が明確か」に当たります。
- 主な必要書類: 賃金台帳、雇用契約書、就業規則、出勤簿など
- ポイント: 書類上の不備(残業代の計算ミスや、就業規則と実態の不一致など)があると、その時点で不支給となるケースが多いです。正確な労務管理が求められます。
②経済産業省(中小企業庁):「事業」の将来性がカギ
ものづくり補助金や事業再構築補助金など、設備投資や新規事業を支援するのが経済産業省(中小企業庁)の補助金です。ここは「お金を出すことで、どれだけ事業が成長するか」という投資対効果が見られます。
- 主な必要書類: 事業計画書、収支計画書(3〜5年分)、決算書など
- ポイント: 現状分析に基づいた具体的な戦略と、それを裏付ける数値計画(収益シミュレーション)が必須です。今回の記事のメインテーマとなる部分です。
③環境省:「環境負荷」の低減効果がカギ
省エネ設備への更新などを支援する環境省の補助金では、「具体的にどれだけCO2が減るか」というエビデンスが最重要視されます。
- 主な必要書類: エネルギー効率のビフォーアフター計算書、CO2排出削減計画書、設備仕様書など
- ポイント: 独自の計算式や省エネ診断の結果など、技術的な根拠が求められます。
経済産業省(中小企業庁)の「事業計画書」と「収支計画書」の本質
ここからは、多くの企業が挑戦する経済産業省系の補助金にフォーカスします。申請の核心となるのが「事業計画書」と、その一部である「収支計画書」です。
補助金ごとに指定されたフォーマット(WordやExcel、電子申請フォーム)は異なりますが、求められている本質は常に同じです。それは、「現在の課題(As Is)」と「将来の姿(To Be)」を描き、そのギャップをどう埋めるかを論理的に説明することです。
しかし、文章でどれだけ素晴らしいビジョンを語っても、それを裏付ける「数字」に具体性がなければ、審査員は「絵に描いた餅」と判断します。そこで重要になるのが、説得力のある「収支計画書」の作成です。
Excelロジックで攻略!収支計画書の「3つの型」
「収支計画書を作るのが苦手」という方の多くは、売上目標を「なんとなく」決めてしまっています。「3年後はこれくらい売れていたらいいな」という希望的観測で数字を埋めると、審査員から必ず「この数字の根拠は何ですか?」と突っ込まれます(あるいは黙って不採択になります)。
実は、世の中のあらゆるビジネスの売上・収支計算は、以下の3つの型のいずれか、または組み合わせで説明可能です。このロジックさえ押さえれば、どんな業種でも説得力のあるExcelシートが作れるようになります。
- フロー型(小売・飲食・サービス業など)
- ストック型(SaaS・顧問契約・会員制ビジネスなど)
- プロジェクト型(建設・受託開発・不動産売買など)
それぞれの特徴と計算式(Excelロジック)、そして審査員が見ている考慮ポイントを解説します。
1. フロー型:少額 × 多頻度
飲食店、小売店、美容室、一般向けサービス業などがこれに該当します。顧客が来店・利用するたびに売上が発生するモデルです。
- 特徴: 少額の商品・サービスを、多くの回数販売する。
- Excelロジック(売上の因数分解):客数 × 客単価 × 営業日数
※さらに細かく分解する場合、客数を「席数 × 回転率」としたり、「新規客 + リピート客」としたりします。
【審査員が納得する考慮ポイント】
- ・稼働率: 「満席率100%」で計算していませんか? 現実的な稼働率(平日60%、土日80%など)で設定されているか。
- ・季節指数: 2月(ニッパチ)や繁忙期(12月)の変動が考慮されているか。毎月同じ売上が続く計画は不自然に見えます。
2. ストック型:継続課金
家賃収入、ITツールなどのSaaS(Software as a Service)、士業の顧問契約、会員制ジムなどが該当します。一度契約すると、解約されない限り毎月売上が発生するモデルです。
- 特徴: 毎月定額が入ってくる継続課金モデル。積み上げ式。
- Excelロジック(売上の因数分解):
前月末残高 - 当月解約数 + 当月新規獲得数
【審査員が納得する考慮ポイント】
- ・解約率(チャーンレート): 解約「ゼロ」の計画は非現実的です。業界平均などを参考に、一定の解約を見込む必要があります。
- ・LTVと初期費用: 1顧客あたりの生涯顧客価値(LTV)が、獲得にかかるコスト(CPA)や初期費用を上回っているか。
- ・契約年数: 契約の縛り期間なども考慮に入れます。
3. プロジェクト型:高額 × 単発(低頻度)
不動産売買仲介、建設業、システム受託開発、大型機械製造などが該当します。1件あたりの金額が大きく、売上計上までに時間がかかるモデルです。
- 特徴: 高単価だが、頻度は低く単発。受注から入金までのリードタイムが長い。
- Excelロジック(売上の因数分解):
案件リストの積み上げ(案件ごとの金額の合計)
※「○月:A社案件 500万円」「△月:B社案件 1,000万円」といったように、具体的な案件見込みをリスト化して積み上げます。
【審査員が納得する考慮ポイント】
- ・確度(ランク付け): すべての案件が受注できるわけではありません。「A:受注確実」「B:提案中」「C:見込み」のようにランク付けし、確度に応じた係数を掛けてシミュレーションすると信頼性が増します。
- ・売上計上月と受注予定月: 「いつ受注して(契約)」、「いつ納品して(売上計上)」、「いつ入金されるか(キャッシュフロー)」のズレを明確に計画できているかが重要です。
なぜ「ロジック」が必要なのか?審査員の視点
補助金の審査員は、多くの場合、中小企業診断士や税理士などの専門家です。彼らは日々、何十、何百もの事業計画書に目を通しています。
その中で、単に「3年後は売上1億円になります!」と書かれただけの計画書と、「店舗面積と席数から最大キャパシティを計算し、近隣の競合店の稼働率平均60%を適用。客単価は新メニュー導入により500円アップを見込み、結果として1億円になります」と書かれた計画書(フロー型のロジック)では、どちらを採択したくなるでしょうか?
答えは明白です。後者には「実現可能性(フィージビリティ)」が感じられるからです。
収支計画書における「Excelロジック」は、単なる計算式ではありません。あなたの事業が「絵空事」ではなく、「綿密に計算されたビジネス」であることを証明するための最強の武器なのです。
まとめ:3つの型を使いこなして採択を勝ち取る
今回は、補助金申請における必要書類の分類と、収支計画書作成の核心である「3つの収益計算ロジック」について解説しました。
- フロー型: 客数 × 単価 × 営業日数(稼働率や季節変動を考慮)
- ストック型: 前月残高 - 解約 + 新規(継続率やLTVを考慮)
- プロジェクト型: 案件リストの積み上げ(確度や計上時期を考慮)
あなたの会社が取り組もうとしている新規事業は、どのタイプに当てはまるでしょうか? あるいは、これらを組み合わせたハイブリッド型でしょうか?
まずは、この3つの型のうちどれを使うべきかを決め、Excelを開いてみてください。そして、「売上」のセルに直接数字を打ち込むのではなく、必ず上記のロジックに基づいた計算式を入力してください。それが、採択される事業計画書への第一歩となります。
事業計画書の作成は、単に補助金をもらうための作業ではありません。自社のビジネスモデルを再定義し、収益構造を可視化する絶好の機会です。ぜひ、このロジックを活用して、強固な経営計画を作り上げてください。